短篇集K:曖昧な世界

目次

言葉遊び
不思議なペンダント
言葉の力
大きな女の子
言葉遊び
 ガッチリとした巨漢の男が悠々と道を歩いている。身長190cm、体重120kg、巨漢で健康的な男子大学生であり、ラグビー部のエースである。彼はドアを前にして軽く屈み、ドアノブを掴み、ドアを開けた。ドアに備わった鈴がリンリンと音を鳴らすと、家の奥の方からパタパタと軽い足音を立てて誰かが玄関に向かってきた。
「おにいちゃんおかえり!」
「ああ、ただいま」
 兄はしゃがんで妹の頭をワシャワシャと撫でる。妹は顔をほころばせて、嬉しそうに撫でられた。
「今日もちっちゃくてかわいいなあ」
 兄はそう言いながら、妹を撫でる。それは兄にとって本心からの言葉であったが、妹は途端に顔をしかめ、そして頭にかざされている兄の手を除けようとした。
「ちっちゃくないもん!」
「あ、そうか、すまん。ところで今日は身体測定だったんだろ、健康カードを見せてくれ」
 兄に言われて妹はしぶしぶと、自分の部屋から健康カードを持ってくる。身長の欄には108cmと記載されており、小学2年生であるにしてもかなりの小柄である。去年は104cmであり同様に小柄であったが、1年で4cmしか伸びず、同級生との身長差はさらに開き、小さい体をさらに小さくさせていた。
「108センチか、相変わらず小さいな」
 兄は、純粋な慈しみからそんなことをつぶやいた。あまりに小柄な妹を不憫に思い、病的なものではないかと心配していた。しかし妹はその言葉を侮辱として捉えて兄に反抗した。
「小さくないもん! これから大きくなるんだもん!」
「あ、そうか。うん、お前はこれからでっかくなるさ。俺がこんなにでっかいんだからな」
 そう言って、兄は妹の頭を撫でた。しかし妹はそんな兄の情すら侮辱に思えた。それほど妹にとって、自分の低身長というのは切実な問題であったのだ。大柄な兄を睨みつけてから部屋へと戻り、妹はその日の夜、満月に向かって手を合わせた。
「どうか、私を大きくしてください。でっかくしてください。背を伸ばしてください。もう小さいのは嫌です。かわいいとか言われても嫌です。お願いします」
 目をつぶって必死に心の中で祈り、気がつけば妹は眠りについていた。明日は土曜日である。これは、とある休日に起こった、世にも不思議なお話である。

*

 朝日が窓から差し込み、鳥がさえずり、涼しげな風が部屋をゆっくりと流れる。妹は体を起こして、霞む目をこする。そしてしばらくぼーっとした後、妹ははっとして壁に向かった。昨夜、身長が伸びますようにと月に向かって必死に祈ったことを思い出したのだ。ここまで全身全霊を込めて必死に祈ったことは、彼女にとっては人生で初めてのことであり、それだけに、何らかの効果があるのではないかと期待していた。
 妹は普段から、壁に背を付けては頭の位置に鉛筆で印を付け、自分の成長を毎日のように記録していた。そして今日も、それと同じことをする。たった今付けた印を見て妹は目を皿のようにし、驚愕し、リビングにいる兄の元へと走っていった。壁に付けられた印は、以前に付けたものよりも5cmほど高く、誤差の範囲では到底済まされないものである。妹は願いが叶ったことを喜び、兄に抱きついた。
「お兄ちゃん! 見てみて!」
 兄はぎょっとし、妹を見た。顔中を輝かせて、彼女は兄を見上げている。
「ど、どうした?」
「ねーねー、あたまにお手手のせてみて」
 兄は言われた通り、妹の頭に手を乗せる。しかし、妹の身長が5cm伸びたところで、その差は兄にとっては小さすぎて、感じることができなかった。
「うーん・・・・・・すまん、よくわからない」
「えー、わたし大きくなったでしょ!」
 その瞬間、妹の身長がググっと伸びる。兄も、その変化を目の当たりにして戸惑った。妹自身も、目線の急激な変化に首を傾げた。
「あれ・・・・・・なんか、大きくなった?」
 そう言うとまたぐぐっと伸びた。現在の身長は123cm、7歳の女の子としては平均的である。
「お、お前、大丈夫か? 何か変なものでも食べたのか?」
「え? ううん、全然。それより、わたし大きくなったよ!」
 妹が無邪気に喜ぶ間にもまた背が伸びる。先程よりも伸びは大きくなり、10cm伸びて133cmになった。ただ拡大していくのではなく、頭身も上がり、若干お姉さんぽくなったのだが、妹自身はそのスタイルの変化には気がついていない。そして、別のこと、この急成長の原因に気がつこうとしていた。
「あれ、また・・・・・・もしかして、『大きく』って言ったら、大きくなるのかな?」
 言っている側から成長は始まり、22cm伸びて155cmになった。小柄な成人女性程度の身長であり、さっきまで113cmという小柄だった妹の面影はすでに消え、中学生くらいの大人びた雰囲気を醸し出していた。
「お、おい。もうやめとけよ」
 兄は妹の急成長を何か病的なものではないかと疑い、制止をかけたが妹の方はそんなことお構いなしである。彼女はキョトンとして、兄を見上げている。兄のヘソよりも小さかった妹は、今では肩ほどの高さにまで成長していた。もっとも、本当の成長はこれからなのだが――
「どうして? お兄ちゃん言ってたじゃん。俺がでっかいんだから、私もそうなれるって」
 また成長していき、妹は170cmになった。女性としてはかなりの高身長であり、兄は戸惑った。
「あれ? 今『大きく』って言ってないのに」
 また伸びて190cmになり、兄と肩を並べた。さっきまでヘソくらいの背しかない妹が短時間の内にここまで大きくなったことに、兄は初期に感じていた妹への憐れみといったものは感じなくなり、妹の巨大化に恐怖を抱き始めていた。そんな兄の心境を、妹が知るはずはない。妹は無邪気に、兄と肩を並べたことに喜んでいる。
「えへへ、お兄ちゃん小さくなったねー」
 その瞬間、今度は兄の背がシュルシュルと縮んでいく。兄は自分の変化に驚き、妹はそれを、自分の背が伸びたからだと錯覚する。
「あれ? 『小さく』って言っても、大きくなるの?」
 また、兄の背が縮む。190cmあった身長はすでに150cmまで縮んでおり、しかし外見は元の巨漢のまま、縮尺を変更したように縮んでいった。おまけに妹の背も更に伸びて210cmになっていた。
「俺が小さくなってるんだ! お前、もうしゃべるな!」
 兄は顔を赤くしてそう叫んだが、それは妹にいくらかのの苛立ちを与えることになった。自分の肩よりも小さい相手に説教をされることに、妹は歳相応の幼く動物的な怒りを感じたのだ。そして妹は兄を上から睨みつけた。
「ふーん、お姉ちゃんにそんなこと言うんだ」
「お姉ちゃんって、お前・・・・・・」
 図に乗った妹に呆れて声も出なかった兄だが、妹が目を瞑って上を向き、兄は妹が次に取る行動を察して背筋が凍るのを感じた。
「でっかくなりたい、でっかくなりたい、でっかくなりたい、でっかくなりたい、でっかくなりたい」
 ギギギ、と体から鈍い音が響き、妹の体がどんどん巨大化していく。妹はその様子を楽しんでおり、やがて天井に頭をぶつけて床に正座し、それでもなお成長は続き、310cmまで伸びた。妹から見た身長150cmの兄は、190cmの兄が見る108cmの妹よりもさらに小さくか弱いものである。もっとも、兄は見た目だけなら巨漢のガッチリ体型なのであるが。
「えへへ、『でっかく』でもいいんだね」
「ば、バケモノめ!」
 兄は顔を青くし、恐怖心をむき出しにしてそう叫んだ。しかし妹はさらに背を伸ばして330cmになり、そして満面の笑みを浮かべて兄の頭を大きな手のひらで包むようにして撫でた。侮辱されても、以前のような怒りは感じなかった。兄が小さく、妹が大きくなりすぎたために、妹は兄という小さくか弱い存在に本気の怒りを抱くことができなくなったのだ。そして妹は兄を玩具であると認識し始めた。
「えへへー、次はお兄ちゃんの番だよ」
「え?」
 兄は一瞬、目の前が明るくなるのを感じた。元に戻れるのではないかと期待した。しかし次の瞬間には、過去最高の絶望が兄を襲うのであった。
「小さくなあれ、小さくなあれ、小さくなあれ、小さくなあれ、小さくなあれ、小さくなあれ」
 兄の体がシュルシュルと小さくなっていく。あっという間に、かつての妹と同じくらいの背丈になったかと思えばさらに縮んでいき、乳児よりも小さくなり、手のひらサイズのぬいぐるみのような大きさになり、妹はそんな兄に目を輝かせた。
「きゃー、お兄ちゃんかわいい」
 兄はまたぐぐっと小さくなる。妹は一瞬首をかしげ、すぐに状況を理解してニヤリと微笑む。
「へー、『かわいい』でも小さくなるんだ」
 兄はまた小さくなり、豆粒サイズにまで縮小していた。兄自身は、あまりに急激な変化に混乱すると同時に、目の前の光景を、あたかもビデオをカメラを通してみているような現実離れした感じを抱き、どこか他人事のように捉えていた。心のスイッチがオフになり、網膜に飛び込む信号を感情のフィルターを通さずに横流しするようになっていた。
「あっ、そうだ、いいこと考えた。ちょっと待ってね」
 妹はハイハイで自室へと戻っていく。その間、兄はただ呆然と妹の帰りを待っていた。待っている間に混乱状態であった頭の中が整理されてきて、じわじわと妹への期待のようなものが湧いてきた。もしかしたら、自分は元に戻れるのではないだろうか。いや、形勢逆転して妹をおもちゃにできるのではないだろうか。そんな都合の良い事を、心の底でゆっくりと考えていた。妹が戻ってきて、手に持っているものが何であるかを知って兄は再び地獄の底へと突き落とされるのであった。
「じゃーん、ミクロスコープ! 学校でもらったんだよー」
 それは数日前、妹が兄に自慢していたものであった。妹は生活科の授業で公園に行って、ミクロスコープをもらい、微生物を見て楽しんだ。兄は当時、最近の学校は進んでいるなあと感心した。それがまさか、こんなふうに使われるとは、夢にも思っていなかった。
 妹は無邪気な笑顔をこれでもかと輝かせて、すでに豆粒サイズとなっている兄を見る。兄の目にはそんな幼い少女の笑顔が、どこかの世界を牛耳った巨大な魔王の浮かべる邪悪な笑みに映り、無意識に背筋を震わせた。
「小さくなあれ!」
 シュルシュルと縮んでいき、豆粒サイズが米粒サイズになる。妹は嬉しそうにミクロスコープで兄を観察するが、ミクロの世界にとって兄はまだ大きすぎる。
「もっとちっちゃくなって!」
 米粒サイズがさらに小さくなり、砂粒サイズになる。まだ大きいが、ミクロスコープでも観察できる大きさだ。妹はキャッキャと騒いだ。
「おにーちゃーん、こっち見てー」
 兄は言われるがままに、レンズの方を見た。兄にはすでに逆らう意志がなくなっていた。妹はダイヤルを回して倍率を上げ、再び呪文を唱える。
「もっとちいさくなあれ!」
 兄はさらに縮んでいく。微生物サイズにまで小さくなり、妹は微生物のような兄を見て無邪気に喜ぶ。
「ねーねー、踊ってみてよー」
 妹に言われて、兄は適当に踊りだす。その表情はまるで能面のように堅いものだが、妹はそれを見て喜んだ。
 兄が休むことなく色々な踊りをするものの、妹の方は段々と飽きてきた。兄はそんな妹の心情の変化を察し、元に戻れるという希望を抱き始めた。
「うーん、飽きちゃった、もうやめよう。私もそろそろ小さくなりたいし」
 その瞬間、兄はさらに小さくなり、ミクロスコープを最大倍率にしても見つけるのに苦労するほどにまで小さくなってしまった。妹はそれに気が付き、焦リ出す。
「あっ、そうか。小さくって。えーと・・・・・・」
 そう言う間にもまた小さくなり、ミクロスコープをもってしても見ることすらできなくなってしまった。
「えーと。お、お兄ちゃん大きくなれ!」
 今度は妹の体がぐぐっと大きくなる。350cmになり、正座をしていても天井が目の前に迫る。
「あ、そうか。えーと、えーと・・・・・・」
 妹は悩み、手を宙でぶらつかせて、頭に手を乗せた。その際、妹は手を天井にゴンとぶつけた。
「あ。もー、大きすぎるるのも嫌だなあ・・・・・・そうだ! お兄ちゃん、でっかくなって!」
 『大きく』はダメでも『でっかく』なら良いのではと思った妹だが、結果はそのとおりにはならなかった。妹はさらにさらに巨大化していき、400cmまで大きくなり、家は益々窮屈となり背中を曲げる。妹はさらに焦った。
「ど、どうしよう。大きくもダメで、でっかくもダメで。えーと、えーと」
 悩んでいる間にも、言った分だけ体は大きくなり、狭い部屋を更に狭くし、その度に焦燥感を増して頭を混乱させた。
「えーと・・・・・・あーもう、お兄ちゃんをもとに戻したいだけなのに!」
 ドカン! という音が、妹の背後からした。同時にミクロスコープが倒れ、中から人影がムクムクと大きくなり始めた。

*

 妹は巨大な体を丸くして正座する。兄はそんな妹の前で腕を組み、足を肩幅程度に開き、立っている。
「反省したか?」
「・・・・・・はい、ごめんなさい」
「俺がどれだけ怖かったのか、分かっているか?」
「・・・・・・はい」
 兄は大きなため息をつく。妹は曲がった背中を更に丸めて、ごめんなさいと謝る。その様子を見て、兄は小さく笑った。
「わかったならもういい。お前も早く元に戻れよ」
 そう言って兄は、自分の部屋へと戻っていく。兄が見えなくなったのを見計らい、妹は自分の尻を見た。そこには、大きな凹みとヒビが入り、無残な様子であった。妹はそれを見るなり、ため息をついて途方に暮れた。
「うー・・・・・・朝は背が伸びたらなあとか思ってたけど、なんかなあ」
 その途端、妹の体がまた大きくなった。ひょんなことから最後の呪文『伸びる』を知り、予想外の事態焦った妹は天井に頭をぶつけて天井を凹ませた。妹は青ざめ、階段の方からは兄の荒々しい足音が聞こえてくるのだった。
-FIN

不思議なペンダント
ジリジリジリジリジリジリジリジリ
目覚ましが鳴り響きます。私は起き上がり、目覚ましを止めました。朝7時、今日も1日が始まりました。
起き上がり、階段を降りてリビングに向かいます。お姉ちゃんが、もう出かけようとしていました。
「おはよう、カナ」
「おはよう、お姉ちゃん」
挨拶すると、お姉ちゃんは小走りで玄関に向かいます。
大きなお胸をプルンプルンと揺らして、走っていました。
私はお姉ちゃんの大きなお胸を見た後に自分のを見て、悲しい気持ちになりました。
いつか、お姉ちゃんくらい大きくなれるといいなと思いました。

私は中学1年生ですが、身長が130cmしかありません。学年でダントツで小さいです。
一方でお姉ちゃんは大学生で、身長は180cmもあります。お胸も大きくて、かっこいいです。
読者モデルをやったり、ミスコンで優勝したり、自慢のお姉ちゃんです。
私も将来はお姉ちゃんみたいになれるといいなと思っています。
しかし・・・・・・私にはいつ成長期が来るのでしょうか。
中学1年生の時、お姉ちゃんは160cmあったようです。かなりの長身さんです。
胸もDカップあったみたいです。それに対して私は・・・・・・ぺたんこです。

背を伸ばしたい! いっそのこと、お姉ちゃんよりも大きくなりたい!
私はそう願いました。早寝早起きをして運動してご飯をいっぱい食べました。
しかし、一向に成長期は来ませんでした。周りの子はドンドン背が伸びるのに、どうして私には・・・・・・
ある日、私は近所に新しくできた薬局に向かいました。とても品揃えが豊富でした。
今日から夏休みです。夏休みといえば成長期です。
私はこの機会に、思いきり身長を伸ばそうと思い、サプリメントのコーナーに向かいました。
お小遣いでカルシウム剤を買いました。他にも、身長が伸びると書いてあるものは何でも買いました。
レジに持っていくと、レジのおじいさんが私の買ったものを見て笑って、恥ずかしくなりました。

「お嬢さんは、身長を伸ばしたいのかい?」
おじいさんは、私にそう尋ねました。私は黙ったまま、こくりと頷きました。
「そうかい、じゃあいいものをあげるよ」
おじいさんはそう言いながら、机の下からキレイな水晶のペンダントを取り出しました。
「これはね、願いの叶うペンダントだよ。一緒に入れておくね。あ、お金はいいよ」
願いの叶うペンダント、そんなものが本当にあるのでしょうか? 私は疑いの目でそれを見ました。
しかし水晶はとてもキレイで、私は目を奪われてしまいました。
おじいさんの言っていたことが本当かは分かりません。
ですが、素敵なペンダントをもらって、私は嬉しくなりました。

その日の夜、私は買ったカルシウム剤などを寝る前に飲みました。
その時、おじいさんからもらったペンダントが目につきました。
蛍光灯の光が当たって、キラキラと輝いていました。
その輝きを見ていたら、なんとなく、おじいさんの言っていたことを信じてみようと思いました。
私はペンダントを首にかけて、ベッドに入りました。
そしてペンダントに、お願いしました。
私の身長を伸ばしてください。できれば、お姉ちゃんよりも大きくしてください。
そんなお祈りをしていると、私はいつの間にか、夢の世界に入っていきました。

ジリジリジリ、私はめざまし時計を止めました。
目覚まし時計が鳴る少し前に目を覚まし、ベルが鳴ると同時にベルを止めました。
いつもよりも気持ちの良い目覚めでした。私はベッドから降りました。
立ち上がると、なんとなく、目線が高くなったような気がしました。
私は、壁に貼られた簡易身長計で身長を測りました。133cm、3cmも伸びていました!
1週間くらい前に測った時、私は130cmしかありませんでした。
朝だからかもしれません。でも朝でも1.5cmくらいしか伸びないことを私は知っています。
ともかく、私はこの1週間で何センチも伸びたんです!
私は嬉しくなって、リビングまで走って行きました。お姉ちゃんが、朝ごはんを食べていました。

「お姉ちゃん、身長伸びたよ!」
私は座っているお姉ちゃんに、そう言いました。お姉ちゃんは不思議そうな顔をして、立ち上がりました。
私の頭上で胸を揺らしながら、お姉ちゃんは私の頭を撫でました。そして、言いました。
「うん、良かったわね!」
お姉ちゃんはそれだけ言って、またご飯を食べ始めました。
伸びたと言っても、たったの3cmです。長身のお姉ちゃんにとって、その差は小さすぎるんです。
でも、私にとっては大きな3cmです。私は悔しくなって、自分の部屋に戻りました。
そしてベッドの上に飛び込み、布団に潜って静かに泣きました。
ふと、胸に硬いものが触れるのを感じました。昨日寝るときに首にかけたペンダントです。
私はそれを取り出しました。太陽の光に照らされて、昨日よりもきれいにキラキラと輝いています。
私はペンダントに祈りました。
私の身長を伸ばしてください。もっともっと、伸ばしてください。
私はお姉ちゃんに呼ばれるまで、そう祈り続けました。

私の身長は毎日伸び続けました。今朝は153cmになっていて、ようやくお姉ちゃんもそれに気が付きました。
「カナ、なんか背伸びた?」
「うん、伸びたよ!」
私は笑顔で、そう言いました。お姉ちゃんは私の前に立って、身長を比べています。
以前は頭の上にあったお姉ちゃんの胸が、今は私の目の前にありました。
私はそれを知って、嬉しくなりました。
そしてこのまま成長して、お姉ちゃんよりも大きくなろうと思いました。
そして寝る前、いつものように私はペンダントにお祈りしました。

私の身長は加速度付けてさらに伸びていき、ついに180cmになりました。
部屋で自分の身長を身長を測り、180.1cmになったことを知って、私は部屋を飛び出しました。
そして、お姉ちゃんに飛びつきました。お姉ちゃんは目を丸くして、私を見ていました。
「カナ、こんなに大きく・・・・・・」
「180.1cmだったよ。お姉ちゃんよりも大きく・・・・・・あれ?」
私は背筋を伸ばして、お姉ちゃんの前に直立します。お姉ちゃんは、私から目を逸しました。
「・・・・・・お姉ちゃんの方が、ちょっと大きい」
お姉ちゃんは少ししてから、はあとため息をつきました。
「・・・・・・ごめん、180cmは高3の時の身長なの。大学に入ってからも伸びて、今は184cmくらいあるの」
お姉ちゃんは申し訳無さそうに言いました。私は少し、がっかりしました。
でも、 この調子で行けば明日にはお姉ちゃんを抜かせるはずです。私は明日が来るのが楽しなりました。

翌朝、私はいつも通り目を覚ましました。
ベッドの上にいる時点で、昨日よりも大きくなったと感じました。
そして立ち上がると、見える景色が全く変わっていました。
身長は202cm、昨日より22cmも大きくなっていました。
私は嬉しくなって、リビングに向かいます。その途中、ドアの枠に頭をぶつけてしまいました。
お姉ちゃんは、今の私の顎くらいの身長でした。
お姉ちゃんのつむじが見えて、嬉しくなりました。
一方で、お姉ちゃんはぎょっとして、私の方を見ました。
「カナ・・・・・・大きくなったわねえ」
「えへへ、まだまだ大きくなるもん!」
私はそう言って、胸を張りました。
その時に気が付きましたが、背が伸びたことでスタイルも良くなったみたいです。
ペタンコだった胸が、少しずつ膨らみ始めました。

私の最初の願いは、『お姉ちゃんよりも大きくなること』でした。
その願いは叶いました。私はお姉ちゃんよりも、頭1つ分大きくなることができたのです。
でも、私はまだまだ大きくなりたいです。
町の誰よりも、外国人よりも、もっと大きくなりたいです。
いや、この不思議なペンダントの力なら、家よりも大きくなれるかもしれません。
大きくなりたい、何よりも、大きくなりたい。私はそう、ペンダントに祈りました。
200cmを超えると色々不自由になってきます。
ドア枠をはじめ、色々なものにぶつかってしまいます。
でも、大きいからこそ役に立てることも、楽しめることもあります。
それに、毎朝グングンと大きくなっていくのは爽快です。
私はもっともっと、それこそ地球よりも、大きくなりたいです。

翌朝、私の足はベッドの外にはみ出ていました。
また大きくなれたことを喜びながら、私は立ち上がりました。
ググッと目線が上がっていき、つむじが危険信号を発しました。
ゆっくりと膝を伸ばし、頭が天井につく頃、私は中腰で立っていました。
私はとうとう、天井よりも大きくなってしまいました。
私はハイハイでドアをくぐり、階段を下り、リビングに行きます。
そしてお姉ちゃんが向こうを向いている間に、再び中腰になって、天井に頭を付けて、言います。
「お姉ちゃん、おはよう」
「おはよ・・・・・・キャー!」
お姉ちゃんは悲鳴を上げて、尻もちをついてしまいました。
私もびっくりしてしまい、天井がみしりと音を立てました。
「か、カナ、何センチあるの?」
私は満面の笑みでもって、答えました。ずっと、言ってみたかったセリフです。
「大きくなりすぎて、もう測れないの!」

外で身長を測ると、250cmになっていました。でも、これは最初から知っていた数字です。
お姉ちゃんが測る準備をしている間に、ペンダントに聞いたら教えてくれたんです。
250cmという身長で、私は近所をお散歩しました。会う人はみんな、びっくりします。
車はびっくりするくらい小さくて、腰くらいの高さしかありません。
少し前まで、私はお姉ちゃんの胸よりも小さかったですが、今では逆です。
私の胸に届く人の方が少ないです。お姉ちゃんが、辛うじて届くくらいです。
私はもしかしたら、世界一かもしれません。でも、まだまだ大きくなりたいと思います。
家よりも大きくなってしまったので、私は隣の公園で夜を過ごすことになりました。
夏でも、夜は少し寒いです。私は小さな毛布を抱きしめて、ペンダントに祈りました。
まだまだ、成長が続きますように。

翌朝、寒さでいつもより少し早く目を覚ましました。
体を起こすと、妙な感じがしました。昨日の自分と、目線が同じなんです。
ついに成長期も終わりかと思い、立ち上がりました。
するとグングンと目線が高くなり、2階を窓から覗けるくらい高くなりました。
私は頭を整理しました。つまり、地面に座った状態で、昨日と同じくらいの身長だったということです。
今の自分の身長を、ペンダントに尋ねました。すると、5mという答えが返ってきました。
5mからの景色は、昨日とは全く違います。私は額に手を当てて、遠くを見る格好をしました。
よくアニメとかで、巨大化したキャラクターがやるような格好です。
でも・・・・・・なんだか、物足りないと感じました。
5mと言っても、家の方がずっと大きいです。アニメとかだと、巨大化といったら家よりもずっと大きくなっています。
私はペンダントを握りしめて、もっともっと、家よりもずっと大きくなりたいと願いました。

「カナー!」
ふと、右の方からお姉ちゃんの声が聞こえました。
お姉ちゃんは窓を開けて手でメガホンを作って、叫んでいます。
私は地面に立って、2階のお姉ちゃんに向かって手を振りました。なんだか、不思議な感じです。
5mというのはとても大きく、足元に気をつけながら道路を歩きます。
また、頭にも気をつけます。油断していると、電線に引っかかってしまいます。
そうやってお散歩をしていると、保育園の子たちが歩いて来ました。
子どもたちは私を見て、「でっかーい!」と叫びました。私は子どもたちに優しく微笑みました。
子どもたちは珍しそうに、私に近づいてきます。
膝よりも小さいと言って、私の脚を触ってきてくすぐったいです。
しばらく遊んでから、私は子どもたちと別れます。そして満足して、家に戻りました。

公園も直ぐに小さくなってしまいそうなので、私は少し離れた所にある空き地で寝ることにしました。
空き地の管理者はとても親切な人で、私が貸してほしいというと、直ぐに貸してくれました。
空き地はとても広く、5mある私にとってもかなり広いです。広すぎて、少しさびしくなりました。
私はペンダントを握りしめて、寂しい気持ちを紛らわします。
そして、今日1日の出来事を振り返りました。
最初に思い浮かんだのは、もちろん保育園の子たちと遊んだことです。
膝くらいしかない子と一緒に遊ぶのは少し怖かったですが、とても楽しかったです。
そんなことを思い出した後、ふと、今朝のことを思い出しました。
アニメみたいに遠くを見てみようと思ったものの、5mというのは思ったよりも小さいです。
それを思い出してから、私は再びペンダントを握りしめました。そして、お願いしました。
もっともっと、大きくしてください。

翌朝、私は寝ぼけたまま寝返りをうちます。すると、お腹の辺りに箱のようなものが当たりました。
私は目を開き、その箱を見ました。灰色の、金属でできた、見覚えのある箱でした。
私ははっとしました。それは、災害用品を備える倉庫にそっくりだったんです。
寝ぼけた頭が一気に冴えました。そして、体を起こして辺りを見渡します。
ほとんどの家は、私よりもずっと小さくなっていました。
私よりも大きいマンションはいくつかありますが、立ち上がるとそれも私より小さくなりました。
私は昨日と同じように、額に手を添えて、遠くを見ました。
視界を遮る障害物がないので、ずっと遠くまで見ることができました。
しかし遠くには、私よりも大きそうなビルや山が見えます。
まだまだ、私は小さいんだなと思いました。

私は歩いて家に向かいました。私が家に近づくと、お姉ちゃんが窓から体を出しました。
「カナー! ここよー!」
お姉ちゃんが手を大きく振っています。今の私から見れば、家はまるでドールハウスです。
私は地面に正座して、お姉ちゃんに向かって手を差し出しました。
お姉ちゃんは窓から体を乗り出し、私の手の上にチョンと乗りました。
私の手は、多分お部屋と同じくらい広いと思います。お姉ちゃんはそこで、寝転がっています。
「お姉ちゃん居心地はどう?」
「思ったよりも良いわ! 柔らかくて」
私は立ち上がり、お姉ちゃんを手に乗せて、歩きました。
目的地は都会です。私よりも大きなビルがあるとウワサの、都会を目指します。

今の私の身長は50mです。それに対して、都会のビルは200mくらいあるようです。
街では大きいと思っていた私も。都会ではビルに埋もれてしまいました。
ビルの間を縫うように歩いていたら、時々窓ガラスの向こうから手を振ってくれます。
ビルで働いているサラリーマンの人たちです。スーツを着て、パソコンを使っています。
そういう人たちに手を振っていたら、見覚えのある男の人が見えました。
私のお父さんです! お父さんが、スーツを着てビルの中で働いています!
ビルのガラスは開かないようで、お父さんと話すことはできませんでした。
でも、偶然仕事中のお父さんと出会えたことを、なんとなく嬉しく感じました。

私の成長は、まだまだ終わりません。
50mになった翌日、私は500mになりました。
あんなに大きく感じたビルは私の腰よりも小さくなってしまいました。
私よりも大きい建物は1本だけ、あの有名な電波塔だけです。
634mあるという電波塔は私よりも頭一つ以上大きく、少し悔しくなりました。
私は無意識の内に胸のペンダントを握りしめて、もう少し大きくなりますように、と祈っていました。
私の身長がぐぐっと伸びていきました。伸びて伸びて、電波塔よりも大きくなりました。
私は嬉しくなって、もっと大きくなりました。更に伸びていき、電波塔が胸よりも低くなりました。

歩いている内に、私の体はドンドン大きくなっていきます。
電波塔よりも大きくなったと思えば、山よりも大きくなり、さらにさらに大きくなっていきます。
家やビルは石ころのように小さくなってしまいました。
しかし、日本はとても広大です。こんなに大きくなっても、見渡す限り陸地が続いています。
私はペンダントを握りしめて、祈りました。もっともっと、大きくしてくださいと。
成長はさらに加速していきました。石ころだったビルは小石になり、砂粒になり、見えなくなりました。
私は他の大陸に行こうと、海に出ました。まるで、浅い川のようです。
当然靴が濡れてしまいましたが、そんなことはあまり気にならなくなっていました。
トコトコと歩き、その間にも大きくなり、気がつけば地球を1週して、日本が小さくなっていました。
列島の幅に靴が入らないくらい、私は大きくなりました。そしてさらに成長していきます。

軽くピョンと跳ねると、地球から飛び出して宇宙空間に出てしまいました。
宇宙に酸素はないと聞いたことがありますが、不思議と息は苦しくありません。
そして、成長はさらに加速度を増して行きます。
バランスボール、ドッチボール、ソフトボール、ピンポン玉、パチンコ球。
地球がドンドン小さくなっていきます。隣の太陽も、同じように小さくなっていきます。
私は宇宙空間を泳ぎます。まるで巨大なプールです。星を手で掻いて泳ぎます。
そんなことをしている間にも、私の体はドンドン大きくなっていきます。
さっきまで手のひらサイズだった星が、あっというまにお米のように小さくなってしまいました。
自分よりも大きい星は時間を経るごとに少なくなっていきます。
私から見れば、宇宙の星々はまるで霧のようなものです。
それでも、私の体はドンドン大きくなっていきます。
宇宙の果てには何があるのか。私は難しいことは何も知りません。
しかし私は今から、自分の目でそれを知ることができるのです。
私はペンダントを握りしめました。そしていつものように祈りました。
私を何よりも大きくしてください、と。
-FIN
言葉の力
人には体と魂があるように、言葉には文字と言霊がある。言霊は人を動かし、時に世界をも動かしてしまう――――


 猛は自分の家のドアを見上げ、呆然と佇んでいた。ドアの高さは2m、身長190cmの猛にとってドアノブは腰ほどの位置にある・・・・・・はずだった。現在、ドアノブは猛の頭上はるか上にあり、ドア枠の高さはその2倍ほどあった。ドアだけではない、家全体がそんな様子であった。今朝の2倍に巨大化していた。そして、こんな異常に巨大な我が家に対して、通り過ぎる人々は何の感想ももらさなかった。・・・・・・こんなことができるのはあいつしかいない。猛は深いため息をつきながら、腕を伸ばし背伸びをして巨大なドアノブを回し、分厚く重たいドアをなんとか開けた。猛の脳裏にふっと、自分の幼少期の記憶が蘇った。外に出ようとドアの前で背伸びをしても、ドアノブにすら手が届かない、そんな記憶だった。
 苦労して家に入ることができたとはいえ、ただ『玄関を開けた』に過ぎない。目の前には広い廊下とドアが3つある。1つ目は猛の部屋、2つ目は妹の空の部屋、3つ目はリビングにつながるドアだ。空の部屋からドタドタという重低音が聞こえ、地面が揺れたと思うと空が巨大なドアを乱暴に開けて猛の前に参上した。猛はそんな妹を見て顔をしかめると同時に、安堵の気持ちも抱いた。
「お兄ちゃん、おかえりー!」
 直立した空と猛が並ぶ、猛は空の腰よりもずっと背が低い。猛の目の前には、自分の胴体と同じかそれ以上の脚が2本立っていた。猛は190cmある大男であるが、空から見れば両手で掴める大きめの人形に過ぎなかった。空は話しにくいと思ったのかしゃがみ込むが、それでも空のほうが猛よりも圧倒的に巨大である。猛は巨大な妹に対して怒鳴り散らしたい気持ちに一瞬駆られたが、口から出てきたのは怒号ではなく、諦めに満ちたため息だけだった――――

***

 1ヶ月ほど前のことである。空は突然、『魔法使い』になった。何か言葉を発すると、それが現実のものになるという能力を身につけてしまった。『大きく』と言えば巨大化し、『小さく』と言えば縮小する。また『戻る』と言えば、それまでの魔法を全て無効にすることもできた。空はそれまでは身長108cmと小柄な小学2年生だったが、魔法によって体長500cmの巨大小学生と化した。当初は魔法に不慣れで色々と混乱することもあったが、今ではすっかり魔法を使いこなしている。新しい呪文も未だに見つかっており、最近は『いくつ』と尋ねることで物の大きさを知れることが分かった。空の身長が精確に500cmというのは、そのようにして知ったものだった。
 魔法を使いこなせるようになった空は、魔法で様々な悪戯をするようになった。猛が何か口出しをする度に、空は猛を小さくするようになった。最初は微生物サイズであったが、その次はウイルスサイズに。さらには素粒子サイズにまで小さくされることもあった。そんな極微スケールでは猛に意識などというものはなく、元に戻ってから空にどのくらいまで小さくなっていたのかを聞くことで初めてそこまで小さくされたことを知るのだが、空は『見たい』と思えばそのスケールを見ることができ、小さくなっていく猛を見ては無邪気に笑っていた。兄妹でそんなことをしているうちに、猛は妹に対して無抵抗になり、妹はそんな猛を従順な弟と見るようになり、兄を「猛くん」と呼ぶこともしばしばあった。
 そして今日、空は家の大きさを自分に合わせて巨大化させた。魔法が使えるようになり、家の中で巨大化した後、空は家の一部を破壊して外に出て、それ以来外で暮らすようになっていた。しかし家が恋しくなり、最近は家に入りたいとよく口にするようになっていた。自分を小さくすれば良いだけの話ではあるが、今の身長に対する思い入れが強すぎるために『戻りたい』と言っても魔法は発動しなかった。そこで空は発想を逆転させ、家の方を巨大化させたのだった。
 
 猛は空に抱かれてリビングまで移動し、かつては空専用だった巨大な脚立を上り、夕飯の支度を始める。野菜も肉も巨大化しており、猛は子どもの視線とはこんなものなのかと、のんきに感心することで現実を直視することを避けた。大鍋に水を入れ、野菜、肉を炒めていく。空も手伝おうとするが、魔法が使えても、身長が500cmあっても小学2年生であることにはかわりない。包丁もまともに扱うことができないが、猛の指示した通り、具が焦げ付かないようにずっと鍋をかき混ぜていてくれた。二倍以上の体格差はあるが、また時々立場が逆転するが、兄妹であることにはかわりない。2人は仲良く、共に夕飯を作った。夕飯は空の好きなカレーライスだった。

***

「ねえ、お姉ちゃーん!」
「えっ? ああ、菜々ちゃん、久しぶりー」
「お姉ちゃん、なんでそんなに大きいの?」
「え、えーと・・・・・・あ! いっぱい牛乳飲んだからだよ!」 
「うそだ! お姉ちゃん、おうちより大きいもん! そんなに大きい人いないもん!」
「ええ・・・・・・うん、ごめん。本当はね、お姉ちゃん魔法使いなの」
「魔法使い?」
「うん。内緒だよ」
「すごーい! じゃあさ、ななの、おねがいとか、かなえてくれますか?」
「う、うん! いいよ!」
「あのね・・・・・・」
「うんうん・・・・・・え?」

 猛は背伸びをしてドアを開け、空は背筋を伸ばして家中を歩きまわる。そんな生活が日常になってきた頃。猛はリビングで椅子に座り、巨大なテレビを空と共に見ていた。猛の椅子の上には本が何冊も積まれており、幼児が大人用の椅子に座る時の知恵を猛は惜しみなく利用していた。
 ピンポーン――インターホンが鳴り響き、部屋でこだまする。猛は空に出るよう言ったが、空はテレビを見ているからと言って、出たがらなかった。猛は仕方なく、高い椅子から降りて地面に着地し、玄関へと向かう。当然魚眼レンズを覗くこともできないため、猛はドアの向こうの人物を確認することなく、巨大なドアを開けた。
「はい、どちら様で・・・・・・」
 ・・・・・・猛は言葉を失った。背丈は猛よりもやや低い180cm程度であり、胸は服の上からでもその膨らみが十分見て取れるほどに大きい。体全体は女性らしい丸みに帯びており、顔は小さく、しかし目は大きく愛嬌があった。正真正銘の美女が、そこに立っていた。美女は手を前で組み、顔を異様に紅潮させて上目遣いで猛の方を見ている。メデューサに会ったかのように猛は体を硬直させ、そんな彼女から目を1ミリたりとも逸らすことすらできず、言葉を忘れてその美女を凝視した。
「は、はじめまして」
「あ、はい」
 透き通るようなソプラノボイスに、猛は我に返り、間抜けな返事をする。
「わ、私、空さんの友達の、菜々っていいます」
「そ、空の、友達ですか?」
「菜々ちゃーん!」
 空がリビングの方から玄関まで飛んでくる。そして2人の前でしゃがみ込み、2人を見下ろしながら満面の笑みを浮かべて言った。
「菜々ちゃんね、お兄ちゃんのこと好きなんだって!」
「ちょ、ちょっと」
 途端に菜々の顔が耳まで赤くなった。急転直下、猛は空の言っていることが理解できなかったが、理解が追いつくと直ぐに顔を菜々と同等までに紅潮させた。
 血流は荒れ狂い、心臓は爆発を繰り返す。しかし脳はそれでもアドレナリンを放出せよとの命令を解除しない。汗は滝のように流れ、下半身は巨大化して血の滾った野獣へと豹変し狭い檻の中を暴れまわった。不自由な腕を本能の操るままに持ち上げ、震える手で彼女の絹の如く滑らかな肩を撫でた。
 その日の夜、猛は全身獣と化するのであった。

 鳥はさえずり、朝日は窓から差し込み2人を照らす。猛の隣には世界屈指の美女がスヤスヤと、平和な寝息を立てて眠っていた。猛はそんな彼女を見るなり慈愛に満ちた微笑みを浮かべ、それから昨夜の雲をも突き抜けるような快感を思い出しては再び野獣へと姿を変えようとしていた。最高の夜だった、人生は長いとはいっても、これ以上の興奮を得ることは殆ど無いだろうと、猛は思った。
 ドアの向こうから足音が聞こえる。猛は内心舌打ちをして、入ってくるであろう敵に備えた。
「お兄ちゃん、おはよー!」
 いつも通り、ノックもせずに空は兄の部屋に入る。空の声を耳にすると、猛の隣で眠っていた姫が目を覚ました。
「菜々ちゃんも、おはよー!」
「あ、お姉ちゃん」
「もう、あのこと言っちゃった?」
「あ、いや・・・・・・まだ・・・・・・」
 菜々は寝起きの白い顔をぽっと赤くして、布団で口元を隠した。猛はなんのことかわからぬといった様子で、2人の顔を交互に見ていた。空は小さく息を吸ってゆっくりと言葉を放った。
「・・・・・・菜々ちゃん、『戻って』」
「ああ・・・・・・」
 菜々の体が、するすると小さくなっていく。巨大だった胸は小さく、丸かった体は起伏の乏しい寸胴に、そして180cmの長身はその半分ほどにまで縮んだ。小さな女の子が、そこにちょこんと座り込んでいた。猛はその幼子を見るなり、目を皿のようにした。
「き、君は隣の・・・・・・」
「そう、4才の菜々ちゃん。私の魔法で大きくなってただけなの」
 菜々は小さくなった体を布団にうずめ、目に涙を浮かべながら、訴えるような目で猛をじっと見つめた。涙目で黙ったままの菜々の気持ちを、空が代弁した。
「菜々ちゃん、お兄ちゃんのことずっと好きだったんだって。でも、年の差だから絶対無理だって思って。でも、私がこんなに大きくなったのを見て、いけるかもって思ったんだって。でも、私ができるのは大きくすることと、成熟させることだけだから」
 それから空はベッドの横でしゃがみ込み、猛と目線を合わせて真剣な表情で言った。
「だからお兄ちゃん。もし菜々ちゃんが大きくなったら結婚してあげて!」
 空と菜々双方の視線が猛に刺さった。猛は急な展開に今の状況を完全には理解していなかった。それでも大方は理解していたし、今やるべきことも分かっていた。猛は一瞬、迷った。空の魔法なくして、菜々があんな美人に成長するという保証はない。また、今の段階で婚約してしまうというのも、お互いにとって早すぎることだと、猛は思った。しかし、今この状況で2人の願いを断るというのは、猛は男としても、空の兄としても、また昨晩菜々と関係をもったことを考えても、できなかった。
「・・・・・・ああ、約束する」
「ほ、ほんとですか?」
 菜々の顔がぱっと明るくなったかと思えば、次の瞬間、顔をしわくちゃにして菜々は泣きだした。猛は泣きじゃくる菜々の頭を、優しく撫でた。
「やったね、菜々ちゃん!」
「はい・・・・・・ゆめみたいです・・・・・・」
「私、応援してるから! 菜々ちゃんが『すっごく』『大きく』『成長』して、『成熟』して、おっぱいとかも『大きく』なりますようにって、祈ってるから!」
「は、はい! わたしもはやく『おおきく』『せいちょう』したいです! たけるさん、わたし、がんばって『大きく』なりますから!」
 菜々は目を輝かせながら、そう言った。猛はそんな彼女を見て、目を細めた。

***

 猛は背伸びをした状態でドアノブを握って回し、ゆっくりとドアを開ける。開けた先には、菜々がニコニコしながら猛を見上げて待っていた。
「たけるさん!」
 菜々は猛に飛びついた。猛は笑顔で菜々の頭を撫でた。そんな無邪気な菜々に、猛は以前の空を重ねてはそれを振り払った。
 こういった事が日課になってから、もう1週間が経とうとしていた。菜々は猛の家にやってきて、猛がいれば抱きつき、いなければ空と雑談をしながら猛の帰りを待ち、帰ってくるなり抱きついた。毎日、それを続けた。そして猛に抱きつくとすぐに家に帰っていった。そんな忠犬のような菜々を、猛は心から感心していた。しかし同時に、一抹の不安も感じていた。猛が菜々と肉体関係を持ったのは事実だが、猛が惚れたのは美女としての菜々であった。空の魔法によって作られた菜々だった。このまま菜々が成長していき、美女になるという保証はどこにもない。猛は心の底から、菜々の『成長』を祈った。菜々と共に過ごしたあの夜の事を、猛は忘れることができなかった。美女でない菜々を愛する自信が猛にはなかった。

 菜々は毎日猛を訪れ、猛はそんな菜々の頭を撫でて、褒めた。頭を撫でる度に猛は妙な感じを覚えたが、願望に基づくバイアスだろうと、初めは気に留めなかった。しかし日を減るごとに猛の違和感は確信へと変わっていった。4才児が小学生になり、小学生が中学生になる様子を、猛はこの1週間足らずで観測していた。菜々の背は日に日に伸びていき、また体つきも女性らしくなっていった。
「な、菜々ちゃん」
「はい?」
「し・・・・・・身長、伸びたよね?」
 菜々はそれを聞くと、にこりと笑ってさらに強く猛に抱きついた。リビングから空が笑いながら玄関まで来た。
「菜々ちゃん、やっと気づいてもらえたね!」
「はい、やっとです! 猛さん、全然気が付きませんでした」
 少女2人の盛り上がりを見て、猛は戸惑う。気がついてはいたが言わなかっただけとの言い訳を飲み込み、空に尋ねた。
「ということはつまり、空の仕業っていうことか?」
「違うよー! 菜々ちゃん、『戻って』」
 空が呪文を唱える。しかし、菜々に変化は見られない。菜々は笑顔で、猛を見上げていた。
「・・・・・・戻らない」
「そうなの! たぶんね、私が成長してっていったから菜々ちゃんが大きくなれたんだとおもうの。ただ大きくなるんじゃなくて、菜々ちゃんどんどん大人になるの!」
 猛は菜々の成長した体を、まじまじと見つめた。身長は150cmくらいで、顔つきはあどけなさが残り、中学生くらいの風貌をしていた。しかし胸は大きめで、将来有望なその膨らみに猛は胸をときめかせた。
「あ、あの・・・・・・そんなに見られると・・・・・・」
「あ! ご、ごめんなさい」
「い、いえ・・・・・・」
 菜々は上目遣いでチラと猛を見上げた。その艶かしい表情は、過去の美女を彷彿させるものであった。

 菜々の成長は日に日に加速していき、ものの数日で女子中学生は身長180cmの八頭身美女へと成長を遂げた。体だけではなく心も頭も成長し、猛に抱きつくことはなくなり、その代わり女の武器で、猛を誘うようになった。
「猛さん。私、成長しました」
 菜々は上品に微笑み、体をゆっくりと滑らかに動かしながら、猛を誘った。
「菜々さん・・・・・・とても綺麗です」
「ふふ、ありがとうございます」
 猛は菜々をそっと抱きしめた。数週間前に味わって以来、ずっと渇望していた感触だった。猛はそれを再び手に入れたのだ。
「ふふ・・・・・・ふふふふ・・・・・・」
 菜々は猛に抱かれながら、気持ちよさそうに体をくねらせていた。猛はそんな菜々を、さらに強く抱きしめた。脳内麻薬が猛を支配し、そして麻痺させていった。
 ・・・・・・何かが変だ。猛は咄嗟に我に返った。抱きしめるのをやめて、菜々の顔を真っ直ぐ見た・・・・・・目線が一緒だった。さっきまで、菜々は猛よりも10cmほど背が低かった。菜々もそれに気が付き、きょとんとした表情で首をかしげていた。
「あれ・・・・・・う、うわっ!」
 菜々の身長が急に伸びた。驚く暇もなく、菜々はさらにさらに大きくなっていった。3mを超えたと思えば、あっという間に4mを突破した。空は菜々の巨大化を魔法で止めようと、戻って戻ってと繰り返し呪文を唱えたが、全く効かなかった。
 5mを超え、巨大な家の天井に頭をぶつけたくらいで、菜々の巨大化は止まった。それから空は色々な呪文を唱えてみたが、どれも効果がなかった。菜々には『成長』の魔法がかかっていた。上限を設定していない以上、この魔法が停止することはない――――

***

 菜々の巨大化は止まることがなかった。3人の切実な『成長』の願いが魔法となり、菜々に作用した結果だった。菜々は家よりも大きくなり、ビルよりも、そして山よりも大きくなった。そこまで巨大化してからは、菜々は海に突っ立つようになった。猛と空は家からでも、天に向かって伸びる菜々の脚を見ることができた。空は毎日のように魔法で菜々に話しかけては、雑談を楽しんでいた。しかし、巨大化を止めることはできなかった。
 ある日の朝、猛が外を見るとそこに菜々はいなかった。妹を起こして菜々と連絡を取ると、菜々はすでに太陽系を離れていた。猛は家を見渡して、菜々が破壊した壁を見た。外を見渡して、菜々が破壊した木々や家、ビルなどを見た。そして、菜々が常識的なサイズだった頃を思い出して物思いにふけった。
 数日後、空は自分も巨大化すると言い出した。巨大化し、宇宙空間に一人ぼっちで漂う菜々は毎日、空に寂しいと言っていた。一人ぼっちの菜々を励ますため、空は菜々と同じ大きさになることを決意した
 。猛が何かを言ったところで空が決意を変えるはずはなく、空はすぐさま呪文を唱えて巨大化した。猛が呆然と妹の巨大化を見守っているうちに、あっという間に空は宇宙空間に飛び立っていった。
 
 恋人と妹がいなくなって以来、猛は普通の日々を過ごしていた。もっとも、天井500cmの異常に巨大な家を除いた、普通ではあったが。普通に起床し、普通に大学に行き、ラグビーをして帰る。巨大な妹に遊ばれる事もなく、絶世の美女に好かれることもなく、また、そんな美女が巨大化することもない。そんな常識的な日常を送っていた。今までの非常識な出来事は全て夢だったのではないかとすら思っていた。しかしその度に、異常に巨大な家を見てはこれが現実であることを再確認し、多くのトラブルに自分を巻き込んでおきながらも、なんだかんだで可愛げのあった2人の少女を失ったことに虚無感を募らせた。
 そんな日常にようやく慣れてきたある日、空いっぱいに、懐かしい声が響いた。
「おにいちゃーん!」
 猛は帰宅途中であったが、足を止めて上を見た。そこには、雲ひとつない青い空だけがあった。空耳かと思い、再び歩き出した。
「おにいちゃんてばー! 聞こえてるー! こっちに『おいで』よー!」
 猛の目の前は瞬時に真っ暗になった。初めは酷く動揺したが、周りに無数にある様々な色、形、大きさの球状の物体がどんどん小さくなっていくことに気がつくと、猛は全てを察した。しばらくすると、真っ暗だった世界は途端に真っ白に変わり、そこには懐かしい顔が並んでいた。
「お兄ちゃん、久しぶりー!」
「お、お久しぶりです」
 妹の空は依然として巨大であった。そして、菜々は空よりもさらに巨大であった。猛なそんな2人を見て、小さく微笑んだ。
「ああ、久しぶり。急に、どうしたんだ?」
「最初は2人で暮らそうって思ったんだけど、やっぱりお兄ちゃんがいないと、変だなーって!」
「これからは、みんな一緒ですよー!」

***

 ――――見えているものが真実なのか。こんな狂った世界があり得ていいのか。猛はそんなことを考えていた。しかし今となっては、むしろ昔の世界の方がおとなしすぎたのだと思うにいたった。
 猛は今、真っ白な世界で空、菜々と一緒に暮らしている。猛の身長を190cmとして、空は500cm、菜々は800cmである。菜々のカラダは健在であり、猛と菜々は毎日の様にセックスを楽しんだ。子どもも産まれた。菜々サイズだったり、猛サイズだったり、男だったり女だったり、色々な子が2人の間にできた。
 猛は、普通の日々を過ごしていた。起床して、子育てをして、女房とも仲良くする。そんな、幸せな日々を過ごしていた。

「猛さん、どうかしましたか?」
「ん? ああ、いや。ちょっと、考え事をしていて」
「なになにー、お兄ちゃんエッチなこと考えてたのー?」
「違う違う、昔のことだよ。俺らがまだ・・・・・・あれ、あそこはなんといったかな?」
「うーん? 昔のこと?」
「お引越しとか、したことありましたっけ?」
「・・・・・・あーすまん、忘れてしまった。思い出したら話すよ」
「そんなこといって、本当はエッチなこと考えてたんでしょー」
「違う違う! ・・・・・・いや、もしかしたら、そうだったのかも・・・・・・な・・・・・・」
-FIN
大きな女の子
 俺は昔から『大きな女の子』が好きだった。決して、胸ががでかいとか尻がでかいとか、そんなものじゃない。まあ、そういうのも好きだが。
 とにかく俺は、『大きな女の子』が好きなんだ。例えるなら、ウルトラマンのフジ隊員とか、超弩級少女の衛宮まなちゃんとか、法廷で巨大化する不思議の国のアリスとか・・・・・・上げればキリがない。

 身長が何百メートルもあるような、そんな女の子が好きだ。人に話せば非常識だと思われるかもしれない、変態だと言われるかもしれない、気違いだと思われるかもしれない。でも俺は、そんな女の子が好きだ。
 断っておくが、創作の話じゃない。現実の、生身の女性としてそんな人と出会い、結ばれたい。最低でも300cm。家の中でハイハイして移動し、その気になれば天井をぶち破れるような、そんな女性が俺の理想だ。
 25歳になっても未だに彼女ができないのは決して俺がモテないからではない。むしろ、そこらの男よりも好意を向けてもらったほうだと思う。でもその女性が普通の身長である時点で、俺は興味を持てなかった。180cmだって、俺にとっては低身長だ。

 そんな女がいるわけない。そんなこと、俺が一番わかっている。ずっと求めて世界を旅し、未だに出会えていないのだから。でも、だから何なんだ。自分の性癖に会う女性がいないから諦めろというのか。そんなくだらない人生に俺は生きる価値を見いだせない、こっちから願い下げだ、死んでやる。そんな女がいないとわかったら、自分の意志でやめてやる。
 でも、まだわからない。いるかわからない、周りの人誰しもがいないと言ったところで、それが真実なのかはわからない。そもそも真実ってなんだ、万民に理解されるほど客観的なものなのか? 実際問題、最先端科学の理解だけでも10年くらいかかるじゃないか。そんなものよりも、俺がいると思えばそうなってしまう、もっと脆くて自由なもののほうが、俺個人のレベルならずっと確からしいし、そっちの方が俺には大事だ。
 もう少しだけ、俺は、理想の女性を探していたい――

――ピー、ピー、ピー

******

 ――ピンポーン
 ドアホンに搭載されたカメラを覗くと、懐かしい人がこちらを覗いていた。従姉妹の、藤井愛(まな)さん、27歳。確かに3年前に結婚して、外国かどこかに行っていたはずだ。
「愛さん、久しぶり! 急にどうしたんです?」
「・・・・・・」
 ドアを開けた途端に、愛さんはワッと泣きだして俺の胸に倒れこんできた。驚くよりも前に、俺はドキリと胸がときめくのを感じた・・・・・・愛さんは、俺の初恋の人だった――

 愛さんを一言で言い表すのなら、容姿端麗・才色兼備・天真爛漫、非の打ち所のない、人柄と才能、そして魅力。愛さんはいつでも自信にあふれていて、楽しそうだった。小学生の時から俺は愛さんのことが好きだったが、愛さんの周りにはいつも人で賑わっていたいた。
 好意を抱きながらも俺は彼女にそれを伝えることはなく、気がついた時には愛さんは結婚していた。俺のもとに愛さんの結婚式の招待状が届いた時の悲しみは今でも覚えている。

 そんな愛さんが、旦那の浮気をきっかけに裁判もせずにそいつと縁を切り、何も持たずに日本に帰ってきて、唯一の知人である俺のところに走りこんできたというのはなんと不思議なことだろう。
 話を聞いてみれば、愛さんの両親はすでに離婚しており、俺の両親とも縁が切れているらしい。外国暮らしが長かったために、かつての友人とも連絡がつかないという。あんなに友人に囲まれていた愛さんがこんな結末を辿るなんて、なんと皮肉なことだろう。

 そんな愛さんが唯一頼れるのが俺なのだ。俺は、愛さんと一緒に暮らすことに决めた。
「愛さん、どうぞここで暮らしてください」
「え、でも・・・・・・ユウくんに迷惑かけるのは」
「迷惑なんかじゃありません! 俺は仕事はデイトレードで時間は自由ですし、金も十分にあります」
 人が変わったように神経質になった愛さんを、俺は必死に説得した。好きな人が不幸になる姿を見たくはない。俺は純粋な慈悲心から、愛さんを説得した。

「そ、そんなに言ってくれるなら・・・・・・ユウくん、ありがとう」
 そう言って愛さんは、俺の右手をぎゅっと握りしめた。
「・・・・・・ありがとう・・・・・・ありがとう」
 俺は愛さんの手を握り返した。・・・・・・心の叫びに耳を塞ぎながら、俺はそうした。



 中学生くらいの頃、俺が自分の性癖を自覚した頃。俺は毎日空に向かって祈りを捧げていた。
「愛さんが巨大化しますように! 愛さんが巨大化しますように! 愛さんが巨大化しますように!」
 思春期の精力を振り絞って、透明な汗と白い汗が水たまりを作って気絶するまで、俺は毎夜毎夜、時には朝昼でも祈りを捧げていた。
 今、俺の目の前には愛さんがいる。身長160cmの平均身長、下から3番目の微妙な大きさの膨らみを備えた、普通の女性だ。
「ごちそうさま」
 俺は朝食を食べ終えて、自分の部屋に戻って仕事を開始する。愛さんと同居してから1ヶ月が過ぎようとしていた。今では愛さんは家政婦として、俺の身の回りの世話をしてくれている。愛さんは、俺の好きな人だった・・・・・・最近までは。
 俺には性癖がある、最低でも身長が300cmないと恋愛対象にならないというものだ。そして愛さんは、そういう人ではない。同居した初めの頃は毎日胸が踊っていたが、日に日に彼女に飽きていった。愛さんに迫られて行為をしようとしたこともあったが、勃たなかった。

 いつもこうだ、人肌恋しくなって女性と付き合っても、1ヶ月くらいで別れてしまう。理由は、普通の人だから。俺を満足させてくれる女性なんてこの世界にいないんじゃないかという気がしてくる。実際、小学生の時から好きだった人にさえ、こんなふうになってしまったのだから。
 その日の夜、俺は月に向かって祈った。中学生の時にやったのと同じ祈りだ。
「愛さんが巨大化しますように! 愛さんが巨大化しますように! 愛さんが巨大化しますように!」
 全身汗だくになっても、まだ祈り続けた。この願いが叶うのなら、俺は地獄に落ちてもいい。そんな思いで、俺は夜通し祈り続けた。何年やっても結果が出たことはない、だからどうした。それで意味がないと決め付けるのか。100回叩けば壊れるドアを、99回目で諦めているかもしれないじゃないか。俺は挑戦する、何度でも挑戦する。俺が、俺であるためにも――



 最初は些細な変化だった。いつもは見下ろす愛さんの目が、その日は真正面にあった。
「愛さん、背、伸びましたか?」
 そう尋ねると、愛さんはニコッと笑った。
「そうみたい! なんか、ユウくんと並んでるね!」
 愛さんは頭の上に手のひらを乗せて、俺の方にスライドさせる。ちょうど俺の頭上を、愛さんの手が通過する。
「スタイルも良くなって、最高!」
 愛さんは右手を腰に当て、右足に体重をかける、いわゆるモデルポーズを決める。スラリとした愛さんに、俺は目を奪われた。
「・・・・・・きれいです」
 本心からの感想だ。
「ふふ、嬉し」
 愛さんはそう言って、俺の頭をポンポンと軽く叩いた。

 愛さんの変化はそれで終わりではなかった。170cmになった愛さんは、気がつけば180cmになって俺を見下ろしていた。180cmの女は、180cmの男よりもデカイとはよく言われるが、それは本当だ。例え用のない微妙な威圧感を、俺は愛さんから感じ、同時に少しだけ興奮した。
 180cmになった愛さんは俺を下目遣いで見下ろした。頭を撫でて、優越感に浸っているようだった。
「ユウくん、ちいさいねー」
 愛さんに弄ばれながら、俺は幸せを噛み締めていた。願いが叶った、そう思った。
 ここで巨大化が止まるのではないかという不安はもちろんあったし、それのせいで夜に眠れず仕事に支障を来す時もあった。しかし、そんな心配は結局のところすべて杞憂に終わった。

 成長は止まらず、190cmを超えた頃から愛さんは外に出ることを控えだした。買い物はすべて通販で済ませ、1ヶ月に一度の美容院くらいしか外に出なくなった。
 一度、無理を言って一緒にスーパーに行ったことがあったが、190cmを超えた愛さんは歩いているだけで注目を浴び、稀にカメラのシャッター音も聞こえてきた。背が高いというだけでこんな目に合うのかと、俺は仰天したものだ。しかし、だからといって成長が止まるわけではない。愛さんはやがて200cmの大台を超えた。俺は日々気絶しそうな思いだった。300cmないと女じゃないと豪語していたがそれはあくまで比喩にほかならない。ようはデカけりゃ何センチでもいいんだ。そして、200cmの愛さんは、俺が想像する300cmなみにデカかった。

 俺の性癖については愛さんはすでに知っているし、むしろ喜んでくれている。親友に暴露しても哀れみに満ちた笑顔で「頑張れ」としか言われなかったが、愛さんはこんな俺を認めてくれるし、愛さん自身、おそらく地球上で最も俺の理想に近い女性だ!
 愛さんの成長は日に日に加速していった。200cmが210cmに、そのうち測るのも面倒くさくなるくらい、巨大化していった。愛さんが家に来て早半年、愛さんは270cmに達して室内を中腰で移動するようになっていた。

 ずっと探し求めていた、俺の理想の女性だ。その時息子は暴走し、俺は理性を失い愛さんを襲った。俺に襲われたくらいで好き勝手されるほど、愛さんは弱っちい人じゃない。だから俺は襲った。
「愛さん!」
 FかGかHか、具体的なサイズは知らないが、縦の成長と共に巨大化した彼女の豊満なふくらみに向かって俺はダイブした。
「あら、ユウくん、珍しい。今日はどうしたの?」
 愛さんはそれを待っていたかのように、優しく俺を抱擁してくれた。270cmという俺よりも1メートル大きい巨体に包まれながら、俺は腰を震わせた。股間が湿っていくのを感じた。

 その日、俺らは晴れて夫婦になった。
 
***

 愛が巨体をうねらせながら産んだ我が娘は身長50cm、体重3000gの標準体型。鳶が鷹を生むというが、まさかの逆のことが起きるなんてと、出産当時はがっかりしたものだ。
 名前は有栖(ありす)にした。名付け親は、もちろん俺だ。とにかく大きくなってほしい、家をぶち破るほどに。という願いを込めた。

 有栖の成長は、はっきり言って異常なものだった。生後数日のうちに寝返りをうった。やがてハイハイし、気がつけば歩けるようになっていた。数週間で言葉を操り、半年も経つ頃には小学生と変わらないほどに大きく育っていた。しかし、中身は普通の赤ん坊でやたらと活発だ。俺は有栖をあやすたびに、ジムでハードトレーニングを受けたような疲労でぶっ倒れた。
 1歳の誕生日を迎えた時にはもう171cmとなり俺の身長を超えてしまった。前途有望な我が娘に俺は興奮を隠せず、愛との行為でそれを抑えようと努力したものの、限界は目に見えていた。
 2歳で200cm、2歳半で250cmとなり、まだ幼稚園にも入れない頃から有栖はそこらの成人女性なんぞは足元にも及ばないような美女へと成長した。誰も、有栖が2歳児とは信じなかった。肉体の成長だけでなく知識の吸収率も早く、インターネットから得た知識を砂が水を吸う如く吸収していった。・・・・・・その中には当然、有栖の年齢に不適切な情報も含まれていた。
 有栖は俺の仕事にも、知らず知らずのうちに手を出すようになった。いつの間にか有栖は大企業の大半の株を手にし、海外の有力企業も合わせて世界有数の影響力を持つようになっていた。年収は有栖の収入だけで1000億を超え、俺はこの予想外の不労所得にしばらく実感が沸かなかった。
 3歳になる頃には、有栖は愛の身長を超えて300cmを突破していた。俺の理性は、有栖が実の娘であるということに対してもリミッターを掛けることはできなかった。愛はもう270cmで止まってしまったようだが、有栖は愛の身長を超えてもなお成長期真っ只中にある。
 ・・・・・・これでどうして我慢ができるだろうか。一昔前までは愛のことを理想の女性とたたえていたが、有栖と比較すれば月とスッポン。俺はスッポンに手を出した。好奇心旺盛の天才少女は、俺の汚れた欲望に対して純白のレースを広げて快く応じてくれた。



 ――バタン
 有栖とのハードトレーニング中、後ろで何かが倒れる音がした。俺はゆっくりと棒を有栖から取り返し、後ろを振り返る。・・・・・・愛がへたりと座り込んで、こちらを凝視していた。有栖の天才のおかげで我が家が世界有数の大富豪となってから、俺らは田舎に広大な土地を購入して巨大な家を建てた。そのおかげで、270cmの愛も普通に屋内で生活することができるようになっていた。
 愛は憎しみに満ちた表情でギリギリと歯ぎしりをさせながらぶつぶつと何かをつぶやいていた。
「あー、これはそのー・・・・・・」
 愛の瞳の奥で、炎がパチパチと勢いを増していくのが見て取れた。やばい、殺される。俺はそう直感した。
「・・・・・・勇太さんまで」
 俺の名前を口にしながら、愛は立ち上がってその巨体を俺に見せつける。
「・・・・・・勇太さんも、私の幸せを壊すのね!」
 愛は叫びながら、俺めがけて突進する。敵の狙うサッカーボールを我先に蹴ろうとする、そんな覇気が感じられた。あ、終わった。俺は全身の力が抜けていくのを感じた。
「もーママったら、喧嘩は良くないよー」
 俺の背後でムクリと巨大な影が起き上がったかと思うと、その影は愛をひょいと、まるで愛が俺を持ち上げるように、持ち上げた。
 有栖が俺を助けてくれた。俺は命拾いしたと、ほっと胸をなでおろした。
「離しなさい! 勇太さんを殺して、私も死ぬの! 有栖、いい子だから、離して!」
「もー、ママはあわてんぼうだなあ」
 そう言いながら有栖は服を脱いで巨大なボールを愛に魅せつけると、暴れる愛の口に哺乳瓶を無理やり突っ込む。
「ほらほらー。おっぱい飲んで、お寝んねしましょうねー」
 愛は次第に無抵抗になっていき、ついには目をつむってミルクを味わい始めた。腹が膨れたのか、愛はミルクを飲むのをやめ、口を離して有栖を見上げた。
「・・・・・・ママー」
「よちよーち、まなちゃんは、いい子でちゅねー」
 有栖は愛を、かつて愛が有栖にしたのと同じように扱った。腹一杯になって満足した愛の背中を目を細めながら撫で始めた。愛はスヤスヤと、気持ちよさそうに眠りについた。
 俺はそんな『母娘』を、ただただ呆然と見上げていた。



 有栖の成長はとどまることを知らず、1500cmにまで巨大化していた。170cmしかない俺との不平等なプロレスに有栖が満足するはずないし、俺のイライラも貯まる一方だった。
 プロレスは気がつけば家族サービスに変わっていた。初めは有栖が俺を子供扱いするだけだったが、日に日にエスカレートしていき、ある日俺は、自分の顔と同じくらい巨大な有栖のダークピンクの軟体動物を舌を使って優しく撫でまわした。
 刺激を受けた軟体動物は液体を噴出し、俺はそれで顔を濡らしながらもミルクを飲んだ。優しい味がした。溢れ出る愛情で全ての罪を流してしまうような、そんな味だった。
「・・・・・・うわあ!」
 夢心地で粉ミルクを飲んでいる最中、それは突如として起こった。俺の体は身長1000cmにまで巨大化し、デスクワークで貧相だった肉体は筋肉を纏った逞しいものと変貌したのだ。
「こ、これは・・・・・・」
「あ、ユウくんおっきくなったねー」
 巨大化してもなお俺より1.5倍巨大な有栖に頭を撫でられ、俺の股間が生理反応を引き起こす。強靭なゴム製のスポンジは布を引き裂いてもなお巨大化し、ドクンドクンと波を伴いながら硬化したダイラタンシー流体は俺の身の丈半分ほどにまで成長し、山の頂上は俺の目の前にまで上昇していた。
「え、ユウくん・・・・・・す、すごいね」
「ああ、俺もびっくりしたよ」
 俺はたった今身に付けた自慢の筋肉で有栖の腰をガッチリと掴み、熱気を放ち、自分の生み出した高温で熱変性したタンパク質を穴に挿入してそれをこじ開けた――

***

 こんな生活を始めて数週間、有栖は500mに、俺は300mにまで巨大化していた。俺らにとってはすでに小さい、巨大だった我が家を建築する際に街を5つほど大人買いしたわけだが、残された廃墟や廃ビルも俺と有栖が愛情を確認するたびに粉砕されて平地となっていく。
 巨大化は日々加速し、さらに数週間もすれば有栖は10km、俺は5kmになっていた。一昔前まで巨人のように俺の前にデンと横たわっていた270cmの愛は、今の俺からしてみれば2000分の1という、ゴマ粒以下の存在でしかなくなっていた。

「・・・・・・てる? ・・・・・・いて」
 愛の声が聞こえた気がした。地面にそれらしき砂粒があった。俺は耳を地面スレスレまで近づけて、愛の声を聞こうと努力した。
「勇太さん! 聞こえていますか?」
「ああ、聞こえてるよ」
「勇太さん、こんなに大きくなって・・・・・・」
「すまない、愛。しかし、キミは昔に戻ったわけか?」
「ええ、そうよ。有栖の効果が切れたみたいで」
「そうか。そんなキミと話すのは久しく、新鮮な気持ちだよ」
「勇太さん・・・・・・ねえ、ちょっとお願いがあるのだけれど・・・・・・聞いてもらえますか?」
 俺は小さく、首を縦に振った。
「・・・・・・勇太さんの・・・・・・の上で、・・・・・・したいの」

 愛の願いを聞き終えると、俺は何も言わずに愛を慎重につまみあげ、井戸のの縁に腰掛けさせた。愛は初めはその悪臭に鼻を摘んでいたが、臭いに慣れたのか、指を小さな穴の中に突っ込み、小さな振動を徐々に大きくしていき摩擦熱を。俺はそんな彼女の姿をじっと見ていた。一歩踏み出せば奈落の底、井戸の縁という危険領域でそんなことに勢を上げている彼女を、俺はただじっと見ていた。
「あ、ユウくんたち楽しそう!」
 有栖が不意に近づいてきて、俺は小さく驚く。・・・・・・もう手遅れだった。長さ2500mある井戸の縁に腰掛けていた愛が、奈落の底に落ちてしまった。俺は神経を集中させて、愛が底へと下っていく様子を感じていた。

「ママすごーい! あ、良いこと考えた!」
 有栖が目を閉じると、有栖の体は白く発光し、その光は膨張していき、最終的に500kmにまで巨大化して有栖の姿に戻った。
「で、ユウくんにはこれあげる」
 有栖はミルクを俺の上からシャワーのように降らせる。俺が300kmまで巨大化すると、有栖は俺に抱きつき、ダンスを始める。今までで一番、濃密で激しいライブだ。歌い踊るたびに俺らは巨大化し、日本を、世界を、最後には地球を揺さぶりはじめた。
「有栖、出すぞ」
「うん。おいで、ママ!」
 有栖の体内に、災害規模の津波が押し寄せた――――

***

 有栖の体内には生命が宿っているらしい。名前は『愛』、有栖の母だ。一人だけ小さかった愛を不憫に思って、有栖は彼女をもう一度産もうと考えたらしい。
「次は、ママも大きくなれるといいね!」
「ああ、そうだな」
 俺は有栖に、適当に相槌をうった。ライブに夢中で気が付かなかったが、いつの間にか、俺らは銀河も宇宙も超えた存在になってしまっていたようだ。そんなふうになってしまったというのはなんとなくわかるのだが、全く実感がわかない。

『愛さんが巨大化しますように! 愛さんが巨大化しますように! 愛さんが巨大化しますように!』
 ふっと頭に、こんな声が聞こえてきた。昔、理想の女性が巨大化してくれるよう、天に向かって祈ったっけ。
 天・・・・・・神・・・・・・単語は何でもいいが、何か、超自然的な存在。かつてはそれに向かって必死に祈っていた。やがて、自分自身がそうなるとは、夢にも思うことなく。

「・・・・・・なあ、有栖」
「なあに、ユウくん?」
「・・・・・・俺、お前が生まれる前に、お前に会わなかったか?」
「ん? 何言ってるの?」
 それだけ言って、有栖は大きくなったお腹を優しくさすった。そのお腹では、愛という名前の胎児が日々たくましく成長している。
「お母さんよ! お母さんよ!」
 有栖は少し激しく、自分のお腹をさすった。俺も、それを真似した。
「お父さんだぞ! お父さんだぞ!」
「ちょっと! あまり激しくしないで」
「ああ、悪い」
 有栖に怒られたせいかは知らないが、ピーピーピーという耳鳴りがした。同時に、懐かしい声があたりに響き渡った。お父さん、お母さん、友人、先生・・・・・・愛さん。かつてお世話になった人々が、俺に向かって話しかけてきた。
 涙腺がじわりと湿るのを感じた。

「ああ、懐かしいなあ。みんな、どこにいるんだろう」
 俺は自分に向かって、ぼそりと呟いた。
「みんな? そんなの、私達が産んでいけばいいじゃない!」
 有栖はそう言った後、俺の方を見てにこりと笑った。
「新しい世界を作ればいいじゃない!」
 有栖の笑顔は、俺が内心抱いていた不安を全て洗い流した。ああ、これでいいんだ。難しいことなんて、他人のことなんて考えなくても、俺が良いと思えればそれで十分だ。俺は小さく笑ってから、有栖に向かって、愛しの娘でありかつ俺の嫁に向かってゆっくりと頷いた。
 無数の人影が俺に話しかけてきた。さっきと同じ、今までお世話になった人たちだ。皆を見ても、俺はもう泣くことはない。今度は満面の笑顔で答えてみせよう。悔いなんてない、これでいいんだ。
「みんな、ありがとう。俺は今、とても幸せです――――」
 体がぶるぶると震えるのを感じた。存在自体が霧散して、自由になっていくを感じた――

――――ピーピーピーピー。
――――
――――
-FIN

創作メモ

この短篇集はケンさんから頂いたリクエスト作品をまとめたものです。自分であれば絶対に書かないようなものを書くことができ、新鮮で楽しかったです。ケンさんとはpixivにて貴重な意見、感想をいただきとても参考になりました。不慣れ故に至らない点が多くあったとは思いますが、ここまで読んでいただきありがとうございます。